「くっ……」

唇を噛むクレアは両手で鎌の柄を握ると思い切り振り下ろす。


数本の短剣を振り払い鎌が地に突き刺さると、天へ向く柄の先をトンと押し飛躍。

短剣の並ばぬ地へと跳ぶが、距離が足りない。


舌打ちをする彼女は左手を突き出し、刃の並ぶその中に手を突っ込む。




 「うっ……」


倒立した状態となり左手に全体重を預けている為、刃は掌を貫通し鋭い痛みが身体中に走る。


その痛みに耐えながら、反動を付け遠くへ跳び、刃の無い地面へと何とか着地に成功した。




 「お見事」


震える左手を押さえ荒い息を吐く彼女へと送られる拍手。

見上げれば、屋根の上から見下ろすフリードが楽しそうに笑いながら手を叩く。




 「でも、これはどうかな?」


彼が指を鳴らすと共に数え切れない程の短剣が宙に浮き、刃先をクレアへと向け漂う。


それはあっと言う間にクレアの周りを囲み、逃げる隙を与えない。




 「さぁどうする?」


 「くっ……」


鎌は前方5メートル先。
それを取りに行く事すらできず、唇を噛むとフリードを睨む。


攻撃を防ぐ為の武器も防具も何も持たず、丸腰の彼女は如何にしてこの現状を乗り越えるか。

思考を巡らすが、その隙すらもフリードは与えなかった。




 「刃の中で血に舞ってもらおうか、クレア」


高みの見物をしていたフリードは右手を一振り。

するとそれを合図に宙に浮く短剣は動きを見せる。

一斉にクレアへと刃を向け、猛スピードで彼女の身に降り注ぐ。




 「うっ…くっ……」


逃げ場を失っているクレアは身を縮め、胸の前にクロスさせる腕の中に顔を埋め耐える。


背中に、脚、腹、身体全体に突き刺さる短剣。


雨のように降り注ぐ攻撃が止んだかと思うと、身体中に突き刺さる短剣が一斉に引き抜かれた。




 「う"ぅっ……!」


身体中に激痛が走る。

血が溢れ、全身を真っ赤に染める彼女は膝を折り、両手を地につくと荒い息を吐いた。