鞘から抜いた刀を右手に持ち、下段に構えるカンナギ。
彼女は地を蹴ったジークを迎え撃つ。
振り下ろされた刃を左手に持つ鞘で受け止めると共に右手に持つ刀を振り上げる。
それを後ろに跳び交わすと、再び距離を縮め刀を振るうジーク。
しかし、
「いっ…っ……」
身体を走る鋭い痛みにその足を止めた。
ポタリと落ちる赤い雫。
視線を落とすと、身体を斜めに走る斬り傷。
先程の攻撃は確実に避け、刃を身に受けていない筈。
それなのに斬られた身体。
ジークは傷口に手を伸ばすと思考を巡らす。
確か、彼女が名を名乗った時も同じような事があった。
刃に触れていないのに突如切れた頬。
刃が触れなくとも、振るった瞬間巻き起きた風が刃を持つと言う事か。
「…厄介な力ですね……」
独り呟くと柄を握り直し、悪戯に微笑む彼女を鋭く睨む。
刀を左手に持ち替え、右足を退くと切っ先を彼に向けるカンナギ。
そしてリンと鈴の音を響かせ地を蹴った。
振り下ろされた刀を弾き、その場から離れると巻き起こる風から逃げる。
それと同時に胴を狙い刀を横に振った。
しかし、身を捻った彼女は再び鞘でそれを防ぎ刀を突き出す。
「っ……」
身を低くし何とか交わすが、肩に当たるか当たらないか紙一重の位置を刃は通過。
刀に触れてはいないが散る鮮血。
咄嗟に柄頭で彼女の鳩尾を突くと、刀を握り直し素早く斬り上げた。
「うっ……」
彼女は身を反らすが腹部を斬られ、顔を歪めると一旦後退し距離をとる。
「中々やりますね、貴方。しかし、刀で私には勝てませんよ」
「私も、貴女に負ける気はしませんが」
腹部の傷を確認しながら自信ありげに言う彼女。
それに対し、何か策でもあるのか嫌味に笑うジーク。
その笑みに彼女は顔を歪めると、鞘を放り投げ刀を握り締めた。

