切り裂かれたローブを染める血の色は赤ではなく黒。
怪我を負っている筈なのに傷口は何処にもなく、そっと触れた身体は冷たく体温を感じない。
ゆっくりと胸は上下し、微かに開いた唇は酸素を吸っている。
人間でなければ一体何だと言うのか。
何ともいえない表情でレグルとシェイラは思考を巡らす。
「とりあえず、部屋へ運びましょう」
「…そうだな。考えるのはその後だ」
空いている部屋へ運ぼうと女性へと手を伸ばすレグル。
しかし身を屈めた所で彼は動きを止めた。
「…ぅぅ……」
苦しそうに唸りながら女性は意識を取り戻す。
露わになった翡翠色の双眼。
自分を見下ろす1人の男性をその瞳に映し、彼女は何処からか取り出したナイフを彼に突きつけた。
「お待ち下さい!」
その声にナイフの動きは静止する。
ナイフの切っ先をレグルの喉元に突きつけたまま、声をあげたシェイラへと翡翠の瞳は向けられた。
「お待ち下さい、刃を納めては頂けませんか?彼は貴女の敵ではありません」
「…敵では、ない……?」
シェイラの言葉を聞き、レグルを観察するように見つめた後、突きつけていたナイフを彼から離す。
解放されたレグルは喉元をさすりながら一人掛けのソファーに腰掛けた。
「申し訳ない。助けてもらったのに、ナイフを突きつけたりして……」
ナイフをしまった彼女は頭を下げる。
そんな彼女に顔を上げるよう言うシェイラは彼女の向かいに腰掛けた。
「意識を取り戻したばかりだが、二三質問をしていいか?」
「はい。気にせず」
「君は一体――」
「私は人工生命体。人の手により造り出された、人の形をした偽物です」
彼女は質問の内容を聞く前に答えを返す。
何故わかったのかと目を細めるが、彼女はクスリと笑ってみせた。
「問う事位わかります。私は人間ではないのだから……」
少し悲しそうな瞳をし、彼女は更に言葉を続ける。
「貴方達の聞きたい事、全て教えます。私は何の為に造られ、何故1人此処に居るのか」
そう言うと、彼女は綺麗な翡翠の瞳を2人に向けた。

