毛先から落ちてきた血が目に入り片目を瞑ると、彼女は彼の唇をペロリと舐めた。
口の端についた血を舐め再び見下ろす彼女。
感情のない真っ赤な瞳に見つめられ、異様な彼女に恐怖を覚えた。
この状態から抜け出そうと身を捻るがが叶わない。
彼の上に乗る彼女は怪しく微笑み、今度は血の滲む肩へと顔を近づけた。
「っ……クレア…止め……くっ……」
傷口をゆっくりと舐めた彼女の舌が、塞ぎかけていた傷口に侵入してくる。
治癒しているという訳ではない。
彼女は只本能のままに血を求め、傷口に舌を沿わせる。
痛みと恐怖に顔を歪め、必死に抵抗を試みるが押さえつけられた彼は逃げる事ができない。
このままでは危険だと、本能が言っている。
危険信号を鳴らす頭の中は混乱し、抵抗するのを諦めかけたその時、
「…っ……」
彼女は突然意識を手放し、彼の上から離れていった。
何が起こったのか思考がついていかない中、腕を引かれた彼は上体を起こす。
「無事ですか?」
「…あ、あぁ……」
顔を上げると、其処にはジークの姿があった。
駆けつけた彼は襲われているコウガを救う為、クレアの首の後ろに手刀を入れ気絶させたのである。
肩の傷に手を添えクレアへと目を向けると、彼女の傍にはシェイラの姿があり、既に治療に取りかかっていた。
「どうですか?」
「……」
ジークは治癒するシェイラに問いかけるが、彼女は無言である。
答える隙もない程、酷い状態だと言う事だろう。
静かに見守る中数分後、シェイラは深く息を吐くと汗を拭った。
治療が終了した彼女は次にコウガの治療へと取りかかる。
だが、彼はそれを止めた。
重体のクレアを治療したばかりの彼女。
体力をほぼ使い果たしている状態の彼女に、これ以上負担をかける訳にはいかない。
疲れた顔をする彼女に大丈夫だと微笑むと、彼女は申し訳ないと頭を下げた。
ジークは気絶するクレアを肩に担ぎ、座り込む2人に手を差し伸べる。
そして4人は無言でその場を立ち去るのであった。

