短剣を手放し脱力する彼を見下ろすと、無傷の右目から一筋雫が伝っていった。
「リオン……」
涙を流す彼に声をかけると、彼は頬を伝う雫に触れ驚きの表情を見せる。
神の遣いと崇めら、普通の人間として生きていけなかった彼は、人々の混乱を防ぐ為、悲しみの感情も、喜びの感情も、全てを捨てて生きてきた。
日常のように人々の辛い過去や未来に触れ、悲しみに慣れすぎた彼は涙を流す事を忘れてしまっていた。
最愛の、たった1人の家族であるシエンを失った今、彼の心はその傷の深さに耐えきれず、心は悲鳴をあげ、涙が溢れ出てくる。
「今は泣け、気が済むまで、泣いていい」
「…ぅっ…うぅ……」
止まらない涙に動揺する彼の頭を撫でると、緊張の糸が切れたのか、彼は声をあげて泣き出した。
右からは次々と透明な雫が流れ、左からは血の涙を流す。
「…リオン様……」
遅れてやって来たクレアとジークに援護され、駆け寄って来たイースは目を見開いた。
涙を流す彼を初めて目にし、驚きながらも彼を優しく抱き締める。
「愚かな……」
エメラルドの髪をそっと撫でる彼女も涙を流す中、銃を手にするライアはつまらなそうに低く呟く。
その声に気づいたコウガは彼を睨み、睨まれたライアは何故か銃を手放し手を挙げる。
弓を構えていた人物も彼と同じように戦う意志はないと武器を背負う。
何をするつもりなのか目を細めていると、ライアはおもむろに口を開いた。
「君達に問う、力を持つ者同士、共に歩まないか?」
コウガ達を見下ろすライアは彼等に睨まれながらも言葉を続ける。
「この世界は腐っている。君達も知っている筈だ、人々の愚かさを。
少し他者と異なるだけで愚弄され、嫌われ、突き放され、人間として見ようとしない。
あまりにも腐りきったこの世界、我等で作り替えようではないか」
人々に差別され続けた者同士、共にこの世界を変えようと言うライア。
堂々とした態度で彼はコウガ達の返事を待った。

