動揺するシエンは男の胸から短剣を引き抜くと、赤く染まった刃を瞳に映す。
「ウィズ!」
胸を刺された男はバランスを崩し、意識を失った彼は階段を転げ落ちて行く。
レオンに捕らえられていた男は油断していた彼を振り払うと、倒れ血を流す男の元へと駆け寄った。
男を抱き起こすとシエンを睨み、彼を治療する為姿を消す。
血に染まる短剣をシエンは手放し、恐怖に目を見開きながら両手で髪をぐしゃりと掴む。
赤紫の髪を血で染めながら、座り込む彼女は逃げるように目を瞑る。
「貴女には、もうこれ以上辛い思いをさせたくない。だから……」
「五月蝿い!やっと手に入れたんだ…ディアルド家の者である証を……父様や母様の娘である証を……」
歩み寄るリオンだが、彼女の言葉に足を止める。
髪色も瞳の色も異なる彼女の心の叫び。
実の娘ではないと思い込む彼女が求めていたもの。
それはディアルド家の娘であるという証。
その証である神の瞳を手に入れ、望みの叶った彼女は何が何でもこの瞳を死守するつもりだ。
「その瞳でなくても、貴女はディアルド家の娘です。髪色も瞳の色も異なっていようが、貴女は父様と母様の愛した娘です」
「嘘を吐くな!そんな気休めなど聞きたくない!」
「僕は知ってます。貴女の過去も、両親の過去も。」
悲しそうに言うリオンの言葉に耳を塞ぐシエンだが、彼はそんな彼女を気にする事なく話を続ける。
「15年前、産まれた貴女を抱き締めていたのは、紛れもなく、父様と母様だった。
産まれたばかりの貴女を抱き締めて、歓喜の声をあげ、喜びの涙を流していた。
2人は、貴女が神の瞳を受け継いでいない事に安心していました。
この力に苦しまなくて済むと、辛い思いをさせなくて済むと。
貴女は父様と母様の、本当の娘なんです、シエン」
3人の過去を視たリオンだからわかる真実。
彼はどうにか彼女を説得しようと熱心に語る。
そんな彼の気持ちが届いたのか、シエンは揺れる瞳で彼を見上げた。

