確かに彼の言う通り、自分の為に命を捨てたと聞いて、はたして彼女が喜ぶのだろうか…
あの彼女なら、きっと…
「お前は既に気づいているんだろう?お前が何をすべきか」
「……」
ジークから手を離し気を落ち着かせるレグル。
部屋で1人酷く苦しむシェノーラの姿を思い浮かべたジークは何も言わずに頷いた。
「さっさと行け。さっさと行って、早く彼女を救ってやれ」
「だが……」
「いいから、行け!」
やっと彼女の気持ちに気づいたかと溜め息混じりに息を吐くと、ジークに背を向けるレグル。
彼女の元へ行けと言うが、レグルを置いて行く訳にはいかない。
口を開くジークだが、レグルは更に彼を促した。
仕方なく彼を残し彼女の元へと向かうジーク。
斬られていた事を忘れていた彼は腹部を押さえ痛みに耐えながら急いで屋敷へと向かって行った。
世話が焼ける奴だと、傷口を押さえ駆けて行くジークの姿を見送ると、レグルはローグと向き合った。
「お前達、奴を追え!」
シェノーラを救う為国の中に入ったジークを追うよう兵士達に命じるローグ。
しかし2人はローグの命令に従おうとはせず、レグルの後ろから動こうとしない。
「貴様等主の言う事が聞けないと言うのか!?」
「彼等は従順に従ってますよ」
「何だと?」
命令に背く彼等を怒鳴りつけるが、ジークを追わない2人は主に従っていると言う。
何をふざけた事を言うとレグルを睨むが、彼の意味ありげな言葉にはっとした。
「まさか、お前達……」
「御察しの通り、2人は我がラグナレア国の兵士。私の部下です」
ローグを探る為2人を潜入させていたレグル。
他にも屋敷に潜入させている者がいると言う。
何も知らず2人を傍に置いたローグは悔しさのあまり言葉を失い彼を睨みつける。
下ろしていた剣の柄を力強く握り締め、レグルへと刃を向け剣を構えた。

