「彼女を…シェノーラ様を、あの屋敷から出して頂けないでしょうか……彼女を、自由にして頂けないでしょうか……」
頭を下げ頼むジークの言葉にピクリと眉を動かすローグ。
邪魔な者を排除し、誰にも触れられないよう屋敷に閉じ込めた。
やっと我がものになったと言うのに、彼女を解放しろと言う。
やはり彼は邪魔者だ。
自分から彼女を奪おうとする邪魔な存在。
早く排除しなければ…
「彼女を思っての事だ。彼女を護る為に屋敷に居させているのだよ。君が口を出す事ではない」
ローグは何も悪くないと言う。
彼女を護る為には仕方ないのだと…
部屋に閉じ込めるように鎖で彼女を縛り自由を奪っておいて、彼女が幸せだと…?
顔を伏せるジークは悔しそうに唇を噛む。
「例え彼女を屋敷から出したとして、私に何の特があると言う?」
「彼女を解放して頂けるのなら、私は貴方の望む通り、この場で命を絶ちます」
顔を上げたジークは鋭い瞳でローグを見つめ言う。
ローグは馬鹿にするなと笑い飛ばすが、そんな彼をジークは真っ直ぐに見つめていた。
「その覚悟で此処へ来ました。彼女を自由にするのなら、彼女を幸せにするのなら、この命、貴方に捧げましょう」
真っ直ぐに見つめる嘘偽りのないその瞳。
彼の態度に苛立ちを覚え拳を握るローグだが、決して表情に出す事なく、彼の気持ちを利用しようと考える。
シェノーラを絶望させる為、大切なジークを彼女の目の前で殺すつもりだった。
しかし、こんなチャンス逃す訳にはいかない。
この場で彼を殺す。
それがローグの出した答え。
「わかった。そこまで言うのなら、お前の望みを叶えてやろう。安心しろ、シェノーラは自由にしてやる。必ず幸せにするよ」
腰に差す剣の柄を掴み甘い言葉を囁くローグ。
彼の言葉を信じ、ジークは何も言わずに目を瞑る。
彼女が満面の笑顔で微笑む幸せな姿を思い浮かべながら…
鞘から抜いた剣を振り上げると、口の端を吊り上げ、彼の首目掛けて振り下ろした。

