鉛色の柵が囲む屋敷の中、悲しそうな表情をし荷物を運ぶ執事、カイリは重い溜め息を吐く。
どうしたらこの屋敷に捕らわれた彼女を救えるのだろうか。
そんな事ばかり考えていた彼は、ふと騒がしい外へと目を向けた。
もめているのだろうか、そんな疑問を抱いた彼だったが、門番と睨み合う人物を目にした瞬間、彼は慌てて外へと飛び出した。
「すみませーん!」
「あ……」
仕事を放り投げ門番へと駆け寄った彼。
門番と言い争っていた人物、コウガはカイリを目にすると声を上げた。
「彼、僕の知り合いなんです」
「知り合い?」
息を荒げながら言うと門番に謝り、コウガを屋敷から離れた所へと連れて行く。
門番は怪訝な顔をしながら遠くから2人を監視していた。
「裏へ回って下さい。直ぐに向かいます」
門番から離れた所でカイリは囁き、コウガに頭を下げると再び屋敷へと戻って行った。
コウガは彼の言葉に静かに頷き、門番にばれないよう遠回りをしながら裏へとまわる。
屋敷の裏に人影はなく、カイリを待っていたコウガは難なく柵を飛び越えた。
高く頑丈な柵がある為侵入は不可能と思っているのだろうが、考えが甘いとコウガは辺りを見回し警戒する。
暫くすると、縄を手にカイリが急いで駆けてきた。
どうやって入ったのかと驚いている様子だったが、誰かが見回りに来るかもしれないと慌てて屋敷の中へとコウガを導いた。

