何かを探るように街中を暫く歩き続けていたジーク。
時刻が夕方に近づいた頃、彼は何故か橋を渡り、スウィール国の外へと出て行った。
シェノーラを置いて国を出て行くつもりなのかと焦ったコウガは彼を止めようと橋の上を駆けて行く。
しかし、橋を渡り終えた所で、大木の影に隠れていた何者かに腕を掴まれその足を止められてしまった。
「なっ……!」
「しっ!」
引き止められたコウガは声をあげようとしたが、腕を掴むその人物がそれを制する。
コウガの口を塞ぎ黙らせたのは目深に帽子を被り顔を隠すレグル。
彼は大木から顔を出しジークが気づいていないか確認すると、コウガから手を離す。
「どうして此処に?」
「見えるか?こっちに向かって来る人影が」
解放されたコウガは大木に身を隠す彼に問う。
するとそっと顔を出した彼はジークが向かう先を指差した。
彼の指差す方向へと目を向けると、馬を率いこちらへ向かって来る人影を確認する事ができた。
「あれは?」
「ベイン・ローグ。フェルノーク国と言う小国の王で、シェイラの婚約者。シェイラに歪んだ愛を向ける俺の嫌手な人物」
姿を隠す2人は声を潜めて話す。
馬に乗るローグを睨むレグルは彼と話をつける為に此処で待っていたと言う。
ローグの姿を確認し彼と対面しようとした時に現れたのがジークとコウガ。
ジークを信じると言うレグルは彼の様子を伺うと言う。
「頼みがあるんだが、コウガ」
レグルはジークの後ろ姿を鋭く見つめながら言う。
こんな状況の中何かできる事があるのだろうか。
「俺達に協力して欲しい」
心配そうな面持ちのコウガを真剣に見つめレグルは手を貸して欲しいと頭を下げた。

