レグルが宿を去り、残ったのはコウガとフィーヤ、ジークの3人。
「頼むって言われても……」
台の上に乗せた腕の中に顔を埋め溜め息を吐くコウガ。
以前セルビアが言っていた言葉を思い出し、ジークを少しでも励まそうと自分なりに考え声をかけてみた。
しかし、その言葉が逆に彼を追い詰めてしまい、事態が悪化したと気を落とす彼は先程からずっと溜め息ばかりつく。
「ジークの事、心配してくれてありがとね」
フィーヤの声に伏せていた顔を上げると、彼女の微笑む姿が目に入った。
コウガの向かいに椅子を置き、片付けを済ませた彼女は腰掛け落ち込む彼に珈琲を進める。
「何も力になれなかった……力になるどころか、辛い過去を思い出させてしまって……」
「そんなに思い詰めないで。私はね、逆にコウガに感謝してるのよ」
長い脚を組みくつろぐ彼女は俯くコウガの頭をそっと撫でた。
突然の事に驚いた彼は彼女の手から離れ平然を装うが、頬はほんのり赤く染まる。
彼の反応にクスリと笑う彼女。
恥ずかしくなり目をそらすが、ふと先程の言葉を思い出し首を傾げた。
辛い過去を思い出させ、この場を重い空気にした自分に感謝していると?
「貴方のお陰で彼自信、大切なものを護る決意ができたと思う。償いだの何だの彼は言うけど、そんなのただの言い訳に過ぎない。本当は彼女の事が大切で、大好きで、愛しくて、傍に居たいと思ってる。なのに正直になれないだけ。
自分にとって必要なものは何なのか、傍にいて欲しいのは誰なのか、貴方に気づかされた彼は、きっと立ち向かってくれると思う。彼自信の試練に……」
ジークに視線を送る彼女は穏やかな瞳で言い珈琲を口に運ぶ。
彼女の話を真剣な面持ちで聞いていたコウガは、本当に彼の力になれたのだろうかと疑問を持ちながら、湯気の上がるティーカップの中身を静かに見詰めるのだった。

