怒りを抱くジークは力強く拳を握り、顔色1つ変えないレグルを鋭く睨む。
「あの時貴方が彼女から離れなければ、彼女の手を握っていれば、こんな事にはならなかった」
過去に何かあったのか、ジークは声を荒げて言う。
「彼女の手を離した貴方にーー」
「わかってる。こんな事、俺が言える立場じゃないって事……だが、お前に同じ道を歩ませたくないんだ。俺と同じように後悔して欲しくない。だから……」
後悔の念を抱くレグルは悲しそうに言うが、もう何も聞きたくないと、ジークは勢い良く立ち上がる。
ふらふらと危ない足取りで端のテーブルへと移動した。
並々に注いだ酒を一気に飲むと、ガタリ音を立てグラスを置く。
酒に潰れるジークを心配し、彼の傍に腰掛けたコウガ。
「ジークはさ、シェノーラの為に生きてきたんだよね……」
そっと優しい声音で言うコウガ。
そんな彼の言葉に酒へと伸ばす手を止めた。
「見てたらわかるよ。彼女の事を一番に考えてるし、離れていた間も心配してた。彼女の事が大切なんだよね」
「……確かに、私は彼女の為に生きてきました……しかしそれは、償いの為だけなのですよ……」
コウガの言葉に何かを思い出したのか、遠い目をするジーク。
そんな彼をコウガは穏やかに見つめた。
「私はね、18年前、彼女の両親を殺しました……それも、彼女の目の前で……」
部屋の中が一瞬にして静まり返る。
グラスの中の氷が溶け、カタリと音を立てた。
部屋に飾られた古風な時計が時を刻む。
その音だけが音のないこの部屋に響く。
「両親を殺した私を傍に置くなど、本当にお人好しで、頑固で、無鉄砲で……
生きる意味を失った私を救った彼女の為に、彼女をを護る為に、生きてきました……しかしそれも、償いの為。そう、償いの為だけ……」
悲しそうに呟くと、テーブルの上に突っ伏すジーク。
もう何も話したくないと目を瞑った。

