「ジークがこんなに酔いつぶれるって事は、彼女の事しかないんじゃない?」
苛立っていたフィーヤはタバコをふかし、気を落ち着かせようと深呼吸をする。
彼女の言葉に同意したレグルは頷くと後ろを振り返った。
「何があった?」
「は、はい。そのーー」
後ろに立っていたのは見慣れない執事。
ジークに付き添っていた彼に問うと、彼は突然の事に戸惑いながらも今までに起こった全ての事を話してくれた。
「ハァ……」
「破門って……嘘だろ……」
話を聞いたレグルは頭を抱え溜め息を吐き、コウガは信じられないと言葉を漏らす。
「本当ですよ……」
黙っていたジークはグラス片手に呟いた。
「まぁ、仕方ないですよ……今まで雇って頂けていたのは奇跡のようなもので……18年もの間、傍に置いていて頂けた事を感謝するのみです……」
空になったグラスを見つめる瞳は悲しい色をする。
「彼女の幸せを奪うような執事など、必要ない……破門にするのも、当たり前ですよ……」
「逃げるのか?」
「…ん?」
「お前は逃げるのか、彼女から」
黙って聞いていたレグルは低い声で言い、真剣な面持ちでジークを見つめる。
ジークは紺の瞳を鋭く細めるが、レグルは顔色1つ変える事はない。
「どんなに辛い時でも、悲しい時でも、何時も笑う彼奴の苦しみを間近で見てきたお前ならわかるはずだ。彼女の本当に望むものが何なのか……
なのに彼女の救いを求める手を掴まず逃げるのか、お前は」
レグルの言葉に何が言いたいと怪訝な顔をするが、レグルは気にする事はない。
「彼奴は全て1人で抱え込むつもりだ。ローグの言いなりになり、この国を奪われ、不幸になる。屋敷という檻の中に捕らわれた彼女の精神は何時か壊れるーー」
「貴方に言われたくない。あの時彼女を傷つけた、貴方に」
ジークは苛立ちを露わに突然机に拳を叩きつけた。

