街中が騒ぎ始めた頃、珍しく宿の扉が勢い良く開く。
「ヒック……あ~……」
「しっかりして下さい、ジークさん」
乱暴に扉を開き入ってきたのはジークとカイリ。
ほんのりと頬を染めるジークはカイリに支えられ、テーブルに何度もぶつかりながらふらふらと歩く。
「何?貴方達何やってるの?」
部屋の清掃をしていたフィーヤは倒れたテーブルをお起こしながら言うが、ジークから漂う酒の臭いに鼻をつまんだ。
酔った彼に呆れながら、カウンターに腰掛けた彼に水を出す。
「フィーヤ、酒~!!」
「朝っぱらから酒なんてーー」
まだ飲み足りないのか酒を要求するが、フィーヤは彼を心配しそれを拒む。
背を向けるフィーヤだったが、硝子が割れ音にビクリと身を震わせた。
水の入ったグラスを床に落としたジークは、紺色の冷たい瞳でフィーヤを睨む。
「……勝手にどうぞ」
荒れている彼を止める事はできないと、諦めたフィーヤは腹を立てながらカウンターに酒を並べた。
「何かあったのか?」
騒ぎを聞きつけ二階から降りてきたコウガとレグル。
2人は様子のおかしいジークの姿を目にして眉を潜めた。
「どうした?」
「知らない」
レグルは問うが、フィーヤは機嫌が悪いのか背を向け話そうとしない。
仕方なくジークの両隣に腰掛けた2人は本人に問うが、酒を浴びるように飲む彼からの反応はなかった。
「おいジーク」
「ん~?あぁ…これはこれは、ラグナレア国の王子様……こんな私に…ヒック……何の用です~…?」
肩を叩くとやっと反応したジーク。
ぼんやりとした視界の中にレグルを映すと頭をさげた。

