「カイリ、そこにいるのはわかっています。入りなさい」
彼の訴えに答える事なく背を向ける彼女は扉の外で待つ人物を呼ぶ。
姿を現したのは先程ジークを案内してくれたカイリ。
こっそり中の様子を伺っていた彼は申し訳なさそうな顔をして部屋に入ってきた。
「彼を外へ連れて行きなさい」
「え……しかし………」
彼女の言葉に戸惑うカイリ。
そんなカイリを彼女は促すが、鉄格子を掴むジークは真意を明かすまで此処を動かないと言う。
「悲鳴をあげますよ?」
「勝手にすればいい。私は貴方の執事だ。罪は問われない」
「残念だけど、私と貴方は赤の他人。名前も知らないわ」
「こんな時に冗談はよして下さいよ、お嬢様」
「冗談だなんて。本当の事よ、私は貴方なんて知らない。貴方と会うのは今日が初めてなんだから」
「なっ……」
互いに睨み合い、顔色一つ変えず言いあう2人。
カイリは後ろで心配そうに2人を見つめ、いい解決策はないかと知恵を絞る。
シェノーラは自分を真っ直ぐ見つめるジークの瞳から逃げるように目をそらし、カイリに連れ出すよう促すと背を向けた。
「早く此処から出て行きなさい。この屋敷から……此処、スウィール国から」
「………」
シェノーラの冷たく言い放った一言に、ジークは何も言えなくなった。
重い空気の漂う中、カイリは立ち尽くすジークの腕を掴み彼を部屋から連れ出した。
顔を伏せるジークを無言で屋敷から外へと案内すると、フラフラと歩いていく彼を心配して後を追う。
屋敷の外に出た2人の姿を部屋の窓から見つめるシェノーラは悲しそうな瞳をし、膝の上で拳を作ると彼等から目をそらす。
眩い太陽を覆う厚い雲は暗く怪しい色をし、今にも雨が降り出しそうだった。

