「なぁ、俺、先に行って表に車回しとくから。ゆっくり来いよ」 「うん…ありがとう」 病室を出る彼の後ろ姿を見つめた。 そして、胸元に視線を落とした。 「もうすぐお家に帰れるよ」 私の腕の中でスヤスヤと眠る赤ちゃんに、声をかけた。 あれから10数年…… 私は恋をし、結婚をし、可愛い女の子を授かった。 「さっ、行こうか。パパが待ってるかな」 そう言って、病室を出た。 ―― 夕貴…… えっ……!? 私は、呼ぶ声の方を見た。