「ねぇ」


いつものおねだりをしてみよう。


「高校合格のお礼をくれない?」


そう言った瞬間のおまえの顔はなんとも複雑すぎて。

言った瞬間
言ったオレ自身が固まりそうになった。


まだ早かったかも……


なんて思うのに
もう止められないのはオレが大人になりきれないからだ。


目の前でキレイになるおまえに
目の前で眩しくなるおまえに


どうしようもなく手を出したくなる子供なオレ。


見せないように
隠すように


意地悪く口角を上げ
意地悪く目を細め
意地悪く誘いの文句を口にする。


「ねぇ、くれる?」