捕まえようとすればするほど、ゆらゆらと、惑わすように飛び回る。
まるで、紗智みたいだな。
追って出た遊歩道で、立ち止まった。
「…おい…勘弁して…。どうかしてる…。」
ありえないだろ…
こんなの…。
夢なら冷めないでと願う。
紗智がそこに立ってるんだ。
こんなとこにいるはずないのに。
紗智が見える。
目をこすっても消えないでくれと願う。
「紗智…?」
呼んだら消えてしまう気がして、聞こえないくらい弱気な声で愛しい名前を呼んだ。
消えてしまうなら、早く消えてくれと願う。
リアルな紗智の幻覚に、吸い寄せられる。
夢なら、抱き締めてもいい…?
ホタルの光が導いたその先で、立ちすくむ影がゆっくり振り向いた。
「…恭ちゃん!来たよ。会いに来たよ!恭ちゃんっ」
泣きながらそう言って、走り寄る愛しい彼女に俺は何を言えばいいんだろう。
もし紗智が俺に会いに来てくれたら、俺は何から伝えればいいんだろう。
ずっと考えてたわずかな希望。
…もし会いに来てくれたら、もう離さない。
END.

