あの夏の日、香る紗智の香りに、色づいた視線に、欲情した。
もう会わないほうがいい。
鳴らない携帯を何度も開いて、そう仕向けたのは自分なのに、紗智の声が聞きたいなんて、弱気になる。
もし紗智が俺に会いに来てくれたら、その時は抱きしめて離さない、なんて、ありもしないことを考えてはかき消した。
田舎娘の紗智が、俺なんかのためにここまで来るはずない。
あの町のバスでさえ、乗り間違えるほど、おっちょこちょいの紗智。
可愛い俺だけの天使。
公園のベンチに座り、空を見上げた。
紗智がいるあの町とは違う暗いの空の色。
…会いたい。
…なぁ、紗智。
ふと、視界に入った黄色の光。
池のほとりを舞う光。
「…ホタル…」

