振り向いた私の目の前にある光景に、思考がついていかない。
「もしもし、修?寄り道してから帰っから、母さんに言っといて。…それと、紗智のこと、ちょっと借りるぞ。」
そこには、恭ちゃんがいた。
「紗智、一人で家に居る時は鍵かけとけよ。」
「……」
「おい、聞いてんのか?」
「何で、何で、…恭ちゃん。」
「何でって約束してただろ。…あ、でもプリクラは勘弁して。さすがに、この歳になるとちっとハズイから。」
目の前で笑う恭ちゃんはいつもの恭ちゃんで、それが余計に混乱させる。
「恭ちゃん…、昨日、ごめんね。それと、私、修とは何も…」
恭ちゃんは笑顔を崩さずに、私の頭に優しく手を置いた。
「昨日、何かあったっけ。何もなかった、だろ?」
…何もなかった。
私が好きだって言ったことそれも、何でもないこと?
先に部屋を出ていく恭ちゃんの背中を見たら、それ以上何も言えなかった。
「何も言うな。」そう言ってるみたいに見えたから。
なかったことにしたいんだ。
私としたキスも、告白も、恭ちゃんにとっては簡単に消せちゃうことなんだ。

