それから観紗は、そのイスに掛けた。右手を肘掛けの上に置き、ゆっくりと手枷をつける。その間、ただ沈黙が続いた。

準備が終わり、観紗は目を瞑る。残り時間は、あと4分だった。

再び沈黙が続く。観紗の左手はボタンの上に置かれているが、まだ動かない。

少しの時が経つと、観紗の左手はやっと動いた。彼女の小さな手は、ボタンを押したのだ。

その瞬間、ギロチンは彼女の小指を切り落とす。真っ赤な血が舞った。

「ぐぁぁぁぁっ!」

観紗の悲鳴は室内に反響する。激痛で表情は歪み、指からは真紅の血が流れていた。

苦悶の表情をしていた観紗は、苦痛の中で強引に微笑んで見せる。

「ほら…。大丈夫…ですよ…。」

激痛の中を無理矢理喋ったためか、言葉は途切れ途切れだった。

「観紗ちゃん…。」

「次は…薬…指ですね…。」
観紗は苦痛をこらえて、再びボタンに手を置く。

「ぐっぁぁぁっ!」

切断された薬指は音をたてて飛んだ。激痛に身をよじる彼女の目からは、大量の涙が流れている。

私たちは、見ている事しかできなかった。

彼女を止める事もできただろう。それでも私たちは、死を恐れて、彼女を説得する言葉さえ出なかった。

私は自分を憎み、1人の仲間も救えない現実を恥じた。

その間にも、彼女はボタンに手を掛ける。激痛に耐え、中指、人差し指と切断を続けた。

「ぐっ、ぎゃぁぁぁぁっ!」

観紗は言葉にならない悲鳴あげる。残り時間も1分となる。

「あと1分しかないよっ!」

玲がそう言うと、観紗は激痛をこらえて微笑んだ。

「わかり…ました。今…から…。」

もう言葉を発することさえ難しいだろう。

観紗は再度、ボタンに手を掛けるが、今度は様子がおかしかった。

「あれ、おかしい…です。手が…動か…ない…。」

激痛と恐怖、大量の出血で、彼女の手は動かない。

刻々と制限時間は迫る。

「残り20秒だよ、観紗ちゃんっ。」

「なん…で動かない…。」

制限時間は10秒を切った。しかし、観紗はまだボタンを押していない。

「押してっ観紗っ!」

「5!」

「4!」

「3!」

「2!」

「1!」

「観紗ぁぁぁぁっ!」

ぐしゃぁっ。