それから沙南の誕生日がやってきた。
俺はなんとなく街に出た。
ショーウインドウを見ながら歩いていると、
前から2人の男女が歩いてきた。
女の方を見ると俺は固まった。
「沙南…?」
沙南だった。
俺じゃない男と2人で歩いていた。
男の方をよく見ると、沙南の元カレだった。
沙南の元カレは沙南のつらい過去を作った張本人だ。
俺はなるべく感情を抑えて沙南に話しかけた。
「…沙南」
「!!…翔ちゃ……」
沙南は驚いて怯えるように下を向いた。
「何してんの?」
「………」
少し怒りを含んだ俺の問いかけに、
沙南は答えようとしなかった。
男の服のすそを掴んでただ下を向いてるだけ。
そんな沙南の態度に俺は感情を抑えきれなくなった。