シャッターの閉まったブテイック。ネオンライトの消えたバー。路上に散らばったたばこの吸い殻。

早朝の街は人数も少なく、夜の喧騒を忘れてしまったのかようだ。

空いた時間は派遣会社で働いている。
“ハケン”と言えば聞こえはいいが、早い話、単なる日雇い労働者だ。

昨夜の電話では、今日は単なる派遣先の業者との顔合わせ、だと言う。

「ただ、その場に居てくれるだけで構いません。もちろん、時給分はちゃんと出しますから。」

朝一番の電車に乗って、公園で缶コーヒーを飲みながら、たばこに火を点け、時間を潰していた。

早朝の何もない静けさが好きだ。
目の前では鳩が集会を開き、ホームレスのおじさんたちがそれに聞き入っている。

少なくとも、ここでは“格差社会”なんて言葉は何の意味も持たず、チープに感じる。
何処かの選挙ポスターが風に舞う。