ハケンSORRY!

「やっぱり、趣味じゃなかったんですね。」

「申し訳有りません。」
渡辺は笑みを浮かべながら詫びた。

「実は政界のトップから極秘に経団連の幹部に要請がありました。仮面総理を探してくれ、と。」

「仮面総理?」

「そう、ある一定の時間、業務だけ総理の代わりをしてくれる人物を探してくれ、と。」

淡々と渡辺は話を続ける。
もう煙草は三本目た。
「まあ、早い話がマスコミ向けです。今の東田って総理は頭は切れるし、政策通です。お金にもやましいところは何もない。ただね、どうも気が弱いんですよ。」

「それって致命的じゃないですか。」

「そう。正直、政治家なんてものは役人が考えたものを実行しているだけです。いくら、頭が切れるだ、政策通だと言ったところで意味がない。ましてや度胸がないんでは。
ところでコーヒーのおかわりは?」

「いただきます。」

渡辺は内線でコーヒーを頼む、と言った。

「それに東田は所詮二世議員。お坊っちゃんで、親の地盤を引き継いだだけ。本人や地元は総理になって有頂天ですけどね。いかんせん、発言がまずい。」

そして、また煙草に火を点けた。
銘柄はKOOL。

「で、ぼくですか。」

「まあ、今は候補ということですよ。難しく考えないで下さい。」