「もし数学の小テストが満点だったら何かおごって。」

「幼なじみ」の中の三人目の川本真冬は私に言った。

私は笑いながら「逆でしょ?」と突っ込んだ。

川本真冬は成績優秀で運動も出来る。

千秋ほどではないが、真面目な女の子から人気がある。

私から見ると、千秋も真冬もそんなに変わらない。

退屈で居心地が良くて、楽しい関係が「幼なじみ」。

私はこの中で一番何も取り柄のない女の子だ。

特別可愛くもなければ、特別勉強が出来るわけでもない。

運動が人並み以上に出来るくらいだ。

だけどそんな私が何よりも言えるのは、この中で「幼なじみ」を一番大好きだって事。

それはきっと大人になっても、変わらない気持ちだと思う。

学校に着いて一限目が始まった。

ちなみに一限目は数学。すぐに恐怖の小テストが配られた。

小春に教えてもらう時間がなく、結局真っ白な頭のままテストを受ける事に
なってしまった。

「はい。じゃあ解答配るから自分で答え合わせをするように。」

数学の教師の橋野は時計を見ながら言った。

私のテストの結果は何とも無残なものだった。

十五点満点中一点だった。

「まさかいないと思うけど、五点以下の奴は放課後残ってテストを直せよ。」

橋野はそう言っていつも通りの授業を始めた。

私は「五点以下の奴はここにいます。」と心の中で突っ込んだ。

しかし・・・。私は頭を抱える。

こんな問題一人じゃやり直す事なんて出来ない。

やっぱ、あいつらに頼むしかないかな?

私はため息をついた。

そして放課後。

私はあいつらこと「幼なじみ」に頼みに行った。

「小春!千秋!真冬!お願い!テストの問題教えてくださ~い!」

三人共一瞬微妙な顔をしたけれど、手伝ってくれる事になった。

「だから・・・。この公式を当てはめるだけなんだって!」

真冬は私に言う。

小さい脳みそでこんな問題が解けるわけがない。

ただ分かるのは真冬がそろそろキレそうだということ。

私はとりあえず答えを書く。

だけど、「違う。」と言われて千秋に叩かれた。

こんなやり取りが数時間続き、ようやくテスト直しが終わった。