私のお母さんには「幼なじみ」がいた。

私はいつもその「幼なじみ」という、友達よりお互いが理解し合えるような

特別な関係をいつも羨ましく思っていた。

だから、私も小学校に入学して「幼なじみ」を作った。

その事をお母さんに話すと、「「幼なじみ」は作るものじゃない。自然となるものだ

よ。」って、言われたけれど、何でもいい。だってずっと憧れていたから・・・。

「幼なじみ」と過ごして九年。私、上原夏希は北海道札幌四季高校の一年生だ。

高校生になっても、「幼なじみ」の関係は変わらない。

毎日一緒に登下校している。

家から出ると「幼なじみ」がすでに待っていた。

私はニッコリと笑って「幼なじみ」におはようと言った。

そして、学校まで一緒に行く。これは毎日のこと。

一緒に歩きながらテレビの話とか、今日の昼食の事とかくだらない事ばかり話している。

でもそれだけでも私はすごく楽しい。

「夏希、今日数学の小テストだって知ってた?」

「幼なじみ」の中の一人、東堂千秋は自転車を手で押しながら私に聞いてきた。

東堂千秋は私から見ると別に何とも思わないが、一般的に見れば格好良い方であり、

勉強面は数学だけ人並み以上出来、運動面はそこそこ。

本人は自分が格好良いとか、モテるとかの自覚はまったくないのだが、そういう所も

また良いらしい。

私は数学の小テストなんてすっかり忘れていて、とりあえず苦笑いをした。

千秋はそんな私を見てフッと鼻で笑って言った。

「お前、数学の単位大丈夫なの?そんなんで。」

何だか馬鹿にされている感じがして、私の眉がピクピクと動いた。

「す・・・数学なんて、社会に出て必要ないし。勉強するだけ無駄無駄!」

「頭の悪い奴に限ってそう言うんだよ。」

千秋はそう言って声を出して笑う。

私はまた言い返えそうとしたが、「幼なじみ」の中の一人の桜木小春が止めた。

「まあまあ。夏希なら大丈夫だよ。やれば出来る子なんだから。」

そう言って可愛く笑う。私はその可愛い笑顔にキュンとくる。

桜木小春は可愛くて、おしとやかで凄くいい子。

運動面はそんなに良くないけど、勉強面は中の上くらい。

男子の憧れの存在なのだ。