1センチの距離


「……」


「え,何。嵐士どっちかに惚れちゃった?!」



「……」


千夏と壱依の言葉に無視を決める嵐士。


「4月が楽しみだね」


全部お見通し,と言ってるかの様な笑みを見せる千夏。


しかし,それでも尚ポーカーフェイスを崩さない嵐士。



そして,そんな2人には適わないな…と傍観している壱依であった。







あれから4ヶ月が過ぎた春――。



「入学式かー……いっぱい来てくれるといいね」


「大丈夫やろ」


「そーそー。いざとなったら来さす」


「それはアカンやろ」



入学式が行われている体育館の前で,千夏,嵐士,壱依の3人はサークル勧誘の準備をしていた。


といっても,チラシを配るだけだが……。


まだかなー…と思っていたその時,体育館からガヤガヤ聞こえてきた。


「来る!」


チラシをギュッと握りしめる千夏。


そんな千夏の肩を軽く叩く嵐士。


「力みすぎ」


「……ぁ」


「チーネが緊張してたら,俺らも緊張するじゃん」


笑いながら言う壱依に,笑みが零れる千夏。