「それに、『お帰りなさいませ。ご主人様』でしょ!? あ、『ご主人様』の後にハートマークが付く感じで。はい、もう一度!」
 は…ハートマーク!?
「…あーもー! いいじゃんかよ、一真なんだから! いちいちそんなのやってらんねぇよっ」
「『一真なんだから』ってなんだよぅっ! ちょっと、このメイド面接受けたー!?」
「あ"ーっ! 受けましたちゃんとやりますぅ! だからさっさとコッチ来いっ!!」
 俺は一真を引っ張り、とりあえず席へと案内した。

「…で? 何か飲む?」
「ぶわぁぁぁか! メイド、しっかりせいっ! こう…もっと可愛く!」
「無理。俺男だし! なんか適当に持ってくるから待ってろっ」

 何が「可愛く」だよ。可愛いってなんなんだよっ

「…お、お待たせいたしました」
 席に戻れば、テーブルにオレンジジュースを置いた。
「…あれ?」
 …なんか、人数増えてるんですけど。
「…なん、え、…何で居るんだよ」
 さっきまでは一真一人だったテーブルに、何人かの人が集まっていた。

 …クラスメートだ。

「ぶっは!! 棗よくやってんじゃんっ」
「『お待たせいたしました』だってよ!」
「超かわええっ」
「…可愛くねぇよ。つーか何しに来たんだよっ」
 なんか…最悪だ。恥ずかしい。
「…あ」
 うげ…白石もいるし。
 目を合わせまいと、俺は男友達の方を向く。
「も、何、恥ずかしいって」
 …すごい視線を感じる。
 と思い、振り向くと、…白石と目が合ってしまった。
 …おいおい俺何やってんだよ…。
「似合ってると思うよ?」
 …白石まで、ニヤけた顔で言う。
「…まぁ、御前よりは似合うだろう」
「はっ!? あたし女だもん。あたしの方が似合うしっ!」
「どうかね」
 
 …結構、白石と話が盛り上がるような気がする。
 一緒に居て楽しい存在、なのかな。

「棗、ここから自由時間でいいよ! メイドお疲れ様ー!」
と、部屋の何処かから声がした。
「ん、あいよーっ」
「なんだぁ、メイドもう終わり?」
「もっといじりたかったなぁ」
「…あほ」
 意味わかんねぇ。女装した野郎じゃねぇか、こんなの。