8月を過ぎても、しばらく暑さは続いた。

「っあ"ーっ!! 暑ー…」

 夏休みが終わり、9月から登校が始まった。
 長い休みが続いたためか、身体が重く感じる。

「花火のとき、白石と何はなしてたの?」

 机に顔を伏せていると、一真が俺の頭を突っつき聞いた。
「花火ー…?」
「そうだよ」
 …あぁ、夏休みのときの…か。
「別に、…一人だったから可哀想、だし。俺優しいから話しかけただけだよ」
「はぁー? 棗そんな人だったっけ?」
「そんな人だったよ」
 流石俺。優しいなぁー…。
「女の子、苦手なんじゃないの?」
「苦手。超苦手。だけど俺優しいから」
 一体俺は、何を…。


「じゃー、文化祭の係を決めておいて」
 10月半ばに、文化祭がある。…今は9月だから、来月か。
「…」
 文化祭の係、か。

 時間が経てば俺も係が決まっていた。

「メイド」

 みんながニヤけた顔をして俺を見ている…。
「…め…メイド?」
「そう。焼きそばとかを客に運ぶ。ちゃんと可愛く振舞えよ?」
 学級委員までもがニヤけていた。
「…俺がメイド?」
「嗚呼。だって御前話聞いてないし。メイド余ってたから、御前でいいかなぁ?って。まぁ、普通のメイドがやることをやってればいいから」
"普通のメイド"ってなんだよ…。
「…なんでだぁ…って、ニヤニヤしてんじゃねぇよっ」

 …俺がメイド…。
 …気持ち悪っ!


「あーっはっは!! 棗、超似合ってんだけど!!」
「うっせぇー! これ足めっちゃスースーすんだけど!?」
「あー! 超似合ってる!」
「聞いてんのかよ!?」
「みんな来てー!! 棗可愛いんだけどー!!」
 文化祭当日が来てしまった。
 メイド服に着替え終わったとき、一真に見つかってしまった…。
「うわっ お前棗!? 超似合ってんだけど」
「ちょ、一真! てめぇ…余計なこと言うなっつーの!」
「だぁって棗君可愛いんだもーん」
 …あー、くそ! 恥ずかしいじゃんか…。
「ま、頑張って!」


「…いらっしゃいませー…って、一真かよ」

「ちょーいちょーい! メイドはそんな事言いませーん!」
 メイドの仕事がよく分からない。一真がお客としてやってきた。