雨は思った以上に容赦なくて、一瞬でワイシャツを半透明に変えた。

もちろん中に着ているTシャツもすぐにびしょ濡れになり、まるで服のままプールに飛び込んだみたいだった。


これは傘があったところでどうせ気休めにしかならなかったな、と自分をなぐさめつつ。
僕は走った。

学校から家まで走れば15分ぐらいだ。


大粒の雨に打たれて、母さんゆずりの猫っ毛が額にはりついてうざったくて。
父さんに買ってもらった流行りのスニーカーが水を吸ってガポガポと音を立てる。


5分くらい走って、僕はいったんスピードをゆるめた。
雨の中だからか、いつもよりも走りづらい。
たまに僕を追い越して行く車がうらやましくてしょうがなかった。


雨が少しだけ小降りになってきたのだけど、すでに僕の体で濡れていないところはなかった。

僕はついに足を止めて、肩で息をした。
なんだかいつもより家が遠い気さえする。


「はぁ…きつ…」

まわりの田んぼで嬉しそうに鳴く蛙の合唱に合わせて息を整えていると、

後ろから

車が近づいてくる音がした。