「それって、どっちに対してよ」

「どっちもだよ!」

「……あんたねぇ」


千沙ちゃんの呆れた視線が何を物語っているかなんて知らないけどっ、あたしは走り出そうとして踏みとどまった。

いや、ここで駆けつけたら駄目だ。元の木阿弥だ。

あたしは、奏太の笑顔には勝てないすり込みがあるって言うのは、この1週間ちょっとで何回も思い知った。

でも、もうひとつある。
奏太に対しての刷り込みが。


「駄目だってわかってるのにぃ。体が勝手に奏太を助けに行きたがる……っ!!」

千沙ちゃんは大げさに肩をすくめて、あたしのお気に入りのカナタのポスターを指差した。

「とりあえず、あのポスターはがすとこから始めてみたら?」

……そうですよね。