君へ贈る愛の歌




「あの、ごめんね・・・。何も言わないで学校行かなくなったりして」



菊子ちゃんにお茶を出してからまず頭を下げた。



「元気ならそれでいいわよ」



相変わらずクールな菊子ちゃんだけど、違うんだ。


こんなにクールな菊子ちゃんがわざわざ山奥のここまで来てくれたんだもん。


相当心配してくれてたんだよね。


本当にごめんなさい。



「あたし、かっちゃんのこと・・探してるの」

「知っているわ」

「え?」

「野蛮そうな先輩から聞いたの。あなたの居場所も、事情も少しね」



野蛮そうな先輩って・・・。


きっと本田先輩のことだよね。



「多少はね、怒っていたわ。友達だと思っていたのはこっちだけだったのかも・・とか」

「そんなことない!!ないよ・・・」

「ええ。分かっているわ」



菊子ちゃんは優雅な動作でお茶を一口のんで私を見つめてきた。



「あなたは真っ直ぐだもの。目先のことしか見えなくなってしまっただけでしょう?」



うぅ・・。


それを言われると痛いよ。



「かっちゃんが・・・入院してるって知って、探さなくちゃって思ったの・・。そしたら頭の中がもうそれでいっぱいになっちゃって・・・」

「責めているわけではないわよ。それほど大切な存在なのよね、彼が」



そう言ってくれた菊子ちゃんは優しく笑ってた。


いつもクールで表情にあまり現れない菊子ちゃんが、笑ってた。


あたし、本当に菊子ちゃんの友達になれたんだ!



「菊子ちゃんは・・・あたしの初めての友達だよ。だからすっごく大切!!こんな山奥まで来てくれたこともとっても嬉しい!ありがとう。・・・失礼なことしちゃってごめんね?」



かっちゃんばかりを大切に思ってきたけれど、そうじゃなかった。


かっちゃんと離れてみて、大切な人が出来た。


かっちゃんは・・・このことを教えてくれたのかなぁ?


なんだかそんな気がしてきたよ。