「そんなこと考えたことがなかったので」
俺がピアノを弾き続けていたのも、歌を歌い続けていたのも、曲を作り続けていたのも。
それはみゅうが笑顔になってくれるからってだけで。
他の人に聴いてもらおうと思ったことはなかったんだ。
「あなたの音で、この世界のどこかにいる誰かが笑顔になれるかもしれない。希望を持つかもしれない。あるいは大切な人の心に響くかもしれないわ」
笑顔。
希望。
大切な人の心に・・・響くかもしれない。
みゅうが躓いたときに、笑顔にさせてあげられるかもしれない。
俺がいなくなってからも、俺が支えてあげることが出来るかもしれない。
「俺の体力で、大丈夫なんでしょうか」
「・・・ええ。全力で支えるわ」
だんだんと弱まっていく自分の体。
けれど、気持ちで負けちゃダメだ。
俺が、俺を信じないとダメなんだ。
もう未来に向かって何も出来ないと思っていたけれど、違う。
俺にも出来ることがある。


