君へ贈る愛の歌




「やぁ、奏大くん」

「悠真先生・・・」



回診の時間でもないのに、悠真先生が病室にやってきた。


後ろに女性がいる・・・?



「どうも、あなたが奏大くんね」

「そうですけど」

「私はこういうものです」



近づいてきた女性に名刺を差し出されて受け取った。


スターレコーディング
プロデューサー
斉木 涼子 サイキ リョウコ


名刺に大きく記載されていたのはそれで、下の方にメールアドレスと携帯の番号があった。



「私の娘がいつもお世話になってるみたいで、ありがとうね?」



娘って・・・もしかして



「花のお母さんですか?」

「ええ、そうよ」



二十代前半に見える彼女は、どうやらいつも俺のピアノを喜んで聞いてくれていた花の母親らしい。



「俺も花といるのは楽しいですから」

「そう。ありがとう」

「あの・・・今日はどうされたんですか」



花の母親だから挨拶にきたというならば、こんなに仰々しいものはもらわないだろう。


何故俺に名刺を差し出したのか、意味を測りかねる。



「私音楽プロデューサーでね?あなたの音に興味があるの」

「俺の、音・・・」

「ええ。あなたの音を、世界観を・・・世界に響かせてみたくなったの」



急な話すぎて頭が会話に追いつかない。


つまり、どういうことなんだ。



「あなたの病状は聞いているわ。タイムリミットも・・・ね。普通にデビューなんて出来ないことは承知よ。だから、顔出しなしでデビューしてみない?」



デビュー?



俺が・・・。