君へ贈る愛の歌




「お前、なんも分かっちゃいねぇな。ブスの気持ちをよ」



上からかけられた言葉は予想に反していた。


珍しくフニャフニャ野郎と言わない本田先輩の言葉は真っ直ぐに聞こえてくる。


みゅうの気持ち・・・。


みゅうの気持ちを、俺は誰よりも理解しているつもりでいた。


今も、そのつもりだ。


だけど本田先輩の言葉に気持ちが揺らぐ。


みゅうの本音を、俺はちゃんと理解できているのかな。


けど今俺の出来ることは・・・。




「みゅうには、俺のことを忘れてって伝えてください。最低な奴にしてくれていいので」

「俺様としちゃあ、ブスのこと引き受けるのなんて簡単なことだ。俺が最高に幸せにしてやる。お前のことなんて忘れちまうくらいよ」





これから先、いなくなる俺のことはどうか跡形もなく忘れてほしい。


・・・みゅうが幸せになってくれることを俺は誰より願ってる。


だから俺のそばにいたいって気持ちじゃなくて、みゅうの幸せのために。


俺はみゅうの手を手放すんだ。



「はい・・・。みゅうを幸せにしてください。誰よりも何よりも、大切にしてください」



俺の事を忘れて、笑顔で生きていける未来を。


どうか、どうか、みゅうに・・・。



「チィッ。ブスが・・・みゅうが望むなら、そうしてやるよ」



本田先輩の足音が、病室を去って行ったんだと知らせてくれた。


本当に俺は・・・みゅうをあの人の元へと手放してしまったんだな。


・・・・・これでいいはずなんだ。


だって



「俺の願いはいつだって一つ・・・みゅうが笑顔でいること・・・」



俺の、愛してやまないみゅうの笑顔を。


どうか


どうか


どうか。