『もう嫌だ』



私の虚しい声は無駄に広い部屋に響き渡った。



机の上にはたくさんの資料の山。



このマンションに来てから全く弾いていない机の横には大きいグランドピアノ。



奏多が死んでから全くと言っていい程音楽にふれてない。



昔は音楽が心の支えだった。



だけどもう昔の話。



簡単に捨てることは出来なかったからこのマンションにも持って来た。



いつかこのピアノがまた弾ける日が来れば良いなと淡い期待を持ちながら――



資料は会社の資料。



家を出たといい全く会社のことを手伝わないわけにもいかない。



だけど私は一切会社には顔を出さない。



目を通した資料とかは秘書とたまに遊びに来てくれる従兄の雅樹に渡している。