誰一人として友達を失い、自らひとりぼっちになった女の子の前に優しく微笑む男の子が現れた。

男の子は殻に閉じ籠る女の子の手を引っ張っり、戸惑ってもなお力強く、けれど優しく何処かへと先導した。
その姿はひどく可笑しかった。可笑しかったのだけど、引っ張られ、その背中を追う女の子自身も可笑しいなと思った。
男の子には理由も目的もなかったのだろう。だから可笑しい。

じゃあ理由なく引っ張られ、目的もないのに先導されている女の子は何なのだろう。
この疑問にだって特別に理由はなく、別段、目的もない。

それでいい。それがいい。
女の子が友達を失ったのは、接するヒトたちが失う『理由』を持ってしまったから。それでも女の子に接するヒトたちは何か『目的』を持っていた。
だからこそ男の子の行動には驚き、風にのるかのように身を任せてみたくなった。

その結果どうだろう。
まず理由も目的もなかったのに結果があった。つまり成果があったのだ。
もちろん女の子は嬉しかった。楽しかった。そして幸せだった。
女の子はもっとその気持ちに浸りたい、もっとその気分に満ち溢れていたいと男の子の背中を追いかけた。

だから、そう。
気が付けば、その背中はいつも目の前にあった。


シルク「……でも、気が付けば目の前から消えていた」

“いつも”はいつまでも続いた訳ではない。
その話は、少し前の話ながら早くもエンディングを迎えたのだ。
ふと瞼を閉じてまた開けば、彼の背中を見つけられた。そんなに簡単だったから、また瞼を閉じて開くと、彼の背中を見失ってしまった。

シルク「ううん、やっぱり違う。彼の背中はまた目の前にある。まだエンディングには早すぎるんだ」

声に出して勇気づけてみる。
たったそれだけでもかなり楽になれた気がした。

シルク「だって、今もこうして目の前に────」

…………。

シルク「目の前に────」

ぐるぐると辺りを見回してみる。上を見る。下を見る。

シルク「い、いきなりいないよぅっっ!!」

ゆっくりと歩いていた筈のアレイドが、私が物思いに耽っているうちにキレイさっぱり消失している。

……あ。泣きたくなってきた。

ほら、親とはぐれて迷子になってすごくすごく不安な子供みたいにさ……ぐすっ。