シルク「ぅ…………ん」

小さな唸りを初めに、段々と意識が蘇ってくる。重い目蓋を押し上げると、先程も見たような眩しい光が目に入って来た。周りを見れば、まだ薄く淡白な陽射しが遊びに来てるのが分かった。
まぁつまり朝だ、って事はともかく、

「おはようございます、シルク様。今朝は幾分か遅い起床ですね」

陽光で透けるカーテンを開けながら言う赤い長髪の女性、アミティの姿が視界に入った。
普段の流れからしてみると、アミティを確認できるのは私がベッドを抜け出した後。
……どうやら、昨日の疲労が原因か、今朝は寝坊してしまったようだ。
むくりと半身だけ起き上がるも、まだまだ疲労が引きずって身体が軋んだ。

アミティ「まぁ仕方のない事なのでゆっくり起きてくれば良い、との事です。久しぶりですね、ここまで起床が遅かったのは。……いい夢は見られましたか?」

シルク「夢……」

そうだ。私は夢を見ていた。
懐かしい、夢だった気がする。
すごく辛かった思い出と、すごく眩しかった想い出が混じり合った、けれど嬉しくて嬉しくて仕方がなかった昔の話。
よく思い出せないけど────きっと幸せだった頃の話だ。

アミティ「あ……いえ。ただ訊いてみただけですので────へ?」

アミティが、私の顔を見るなり間の抜けたような声を出す。しかもぽかん、と口を開けたまま硬直している。
……一体、何でしょうか。

アミティ「あの……姫様……その、今、」

言葉を濁すと言うか、何故か上手く言葉に出せないようで、ただ私の顔をまじまじと見つめる。
私の顔が膨張してるとか、寝癖で髪が荒々しいとか、寝間着がはだけてるとか思って、頬に触れ、髪を触り、寝間着を確認するも、別段おかしな点はないようである。

アミティ「笑い……ました?」

そして長い間を開けて出した言葉は、よく分からないコトだったりする。