「いや、別に礼が欲しくてやったワケじゃないし……ま、そーゆートコはともかく────俺の名前はアレイド。アレイド=ブレイブリーだ。ヨロシク」

アレイド、と。
彼はまた太陽のように笑って名乗った。裏表のないまっすぐな笑顔はよく覚えてる。
────うん。
私の記憶は、このヒトを忘れさせなかった。だからずっと焼き付いて離れなかった。

白状しよう。
私ことシルクは、先程からずっとアレイドの事を考えていた。

「────誠に無礼ながら一つ失礼を…………貴様その口の利き方は何だぁ! 誰に向かってそのような口を利くかぁ! 恥を知らんか恥をー!」

「そ、そんなに怒鳴らなくても……ね、落ち着きましょう、ね?」

スレッド「はぁ。恥を知るのはお前の方だ……。アミティ、その自己拡声機を捕縛しておけ。後に吊るし首だ」

「は、ははは……畏まりました」

「なな! そんな、殺生でございます……っ! 私はただ彼の言葉遣いを注意……いや、そもそもあいつは不審者であって……はな、離すんだアミティ、私は」

ばたん。
扉の閉まる音を最後に、一人なのに喧騒、自己拡声機は部屋から消えていった。台風みたい、という喩えはもうお馴染み。だってこの類のやり取りは日常茶飯事だもの。

連行されたのはフィル。
お父様直属の部下で、兵士さんたちのリーダー。すごく忠義心が固く、フィル自身はさらに固い。古き良き頑固さの名残なのか、過剰なくらい『礼儀』を重んじている。アレイドを注意したのもその結果なのだけど、見て分かる通り空回りばっかりだ。フィルは頑張りすぎなのです。

あと、連行したのはアミティ。
フィルと同じくお父様直属の部下。逞しい兵士さんたちの中の紅一点で、自然とアイドルにまで押し上げられた美人さん。主にフィルのストッパー的な役回りなのかもしれない。