SHINE and STAR

そのはずだったが。


「────さて。いい加減に止まってくれねぇかな、デカブツ」


死神の鎌がシルクを斬ることはなく、その行使は中空で無力化されていた。

停止した原因は、
銀の剣を眩しいほど輝かせ、
マントのような紅の外套を華麗にひらめかせ、
シルクをかばう形で割り込んだ人物による抑止。

シルク「ぇ────」

刃を交差させ、異形の暴威を無に変え、窮地の姫君を救うべく颯爽と駆けつけた姿は正に……そう、白馬に乗った『王子さま』に違いなかった。

「少し待ってくれ。すぐに片付けるからさ」

優しげな声が流れる。
つい安心してしまいそうな、大きく広い背中。揺るぎない、力強い声色。
……この人ならば頼ってもいいのだろう。
シルクは自然とそう思えた。

「さてさて……思い思いに暴れてくれちゃって、どうしてくれるんだ?」

驚く事に、彼は暴君の異形を前にしても侮りきった余裕を見せていた。
その逆。
対峙する相手の方が、醜い貌をより険しくさせていく。

“、、、、!”

力強く唸りはするが、牛の腕には力が入らない。
……否。十分な力を以ってしても、抑止する刃を退けられない。
しかし彼は片手だ。異常な筋肉が腕を作っているのだろうか、圧倒的な力の格差が窺える。実際、そうでなければ抑止など出来やしない。

だが抑止がいつまでも継続する事はなく、膠着状態の交差にも動きが生じる。
無論、行動を起こした、起こせたのは剣構える彼の方。しかし剣は不動のまま交差し続け、代わりに、

シン、と。

“何か”を握る空いた片手が半月を描き、緑の鋭い軌道が空気を鳴らした。