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白、または淡いクリーム色の落ち着いた彩りの壁に、色濃く主張する茶の柱。等間隔に吊されたガラス細工の電灯が妙に安息を促している。
……城内の雰囲気は、どちらかと言えば高貴さを漂わせるのではなく、より優雅に過ごす事を目的とした快適空間が設えられていた。

「なに……?」

だが、駆け付けた姫君は思わず疑問を漏らした。

快適に過ごす為に綺麗でなくてはならない床。……大雑把に転げ落ちている残骸。
個々が優雅に振る舞うべき吹き抜けの廊下。……見苦しく抉られた壁、不格好に開けられた天井の穴。

異常なのは明らかすぎた。だが今は、おかしい、とだけ言っておく。
強いて言えば残骸の方は何かと理由をつけられるが、とりあえず上方に開いた空洞は不自然だ。何かの拍子に開いてしまったという出来では決してなく、しかも人為的な方法では無理難題。加えて全く必要性を感じさせない。……穴の大きさ、穴の位置、穴の開く理由において、全て合点のいく所はないのだ。
……抉られた壁は、むしろ何とも言えはしない。

「どう、したらこんな……」

しかしながら、考えたところで答えが出る訳でもない。
真実を知るまで疑問は謎でしかないのだから、姫君が選ぶべき行動は……とにかく走る以外になかった。
何故か?
それは、穴から見える先────一つ上階には姫君にとって大切な人の居場所があり、同時に、姫君には大きな不安が憑き纏ったからだ。

目指すは両親、王のもとへ。