青い青い晴天。
曇りない海原は燦々と太陽を輝かせ、白い影が入る隙間を作らせない。稀に吹く北風も、陽気な空気に溶け合ってすがすがしい。

此処、『テーブルランド』の核層は大した異常もなく、天候のみに左右される温帯。
広い高原には初々しい緑が埋めつくし、少しばかり高い丘に少しばかり大きい城が建っている。
その丘のふもとには賑やかな城下町が営まれ、普段通り、平常に暮らす住民たちがささやかな日常を送っていた。


「────」


城では、窓越しに城下町(そと)を窺う、虚ろな瞳の少女の姿があった。
藍、いや、群青の瞳は濁りに満ちて深みがない。そのレンズには浅い情景しか映っていないのだろう。同時に、暗く沈んだ表情を浮かべる。顔色も悪く、病弱な雰囲気さえ漂う。

けれど対象的に明るく、光輝になびく髪。
その金の輝きは一際────美しい。
肩先まで伸ばされた後ろ髪が、彼女がいかに清楚であるかを自然と理解させているのだ。

……そして今日もまた、深い溜め息を一つ。

宝の持ち腐れ。
絶世の美貌があろうが、彼女自身が覆う負の感情の下に荒んでしまう。
しかし彼女は何も思わず、何も感じなかった。自分の感情が自身の価値を腐らせている事も気にならなかった。