───────


魔物であったモノに跡形はない。
爆発し、砕け散ったそのカラダは飛び散る以前に消えてしまった。
……理由など知った事ではない。

シルク「…………」

今はもういない、魔物を直視した。アレイドに言われた通りに。
恐怖心はまだ少し残っているけど、なくなったモノを恐れる道理はない。そのうち消えてなくなるだろう。

────どくん。

なのに、“なくなった”後のこの強い鼓動はどう説明しようか。

アレイド「終わったよ、そんなに硬くなるなって」

フィル「む、む? もう大丈夫なのだな? 速すぎて何がなにや、」

「すごい、すごいな! やっぱりすごいよ!」

アレイド「おうよ、これがヒーローの力だー!」

フィルの陰から飛び出し、アレイドにじゃれつく少年。
胸を張って、無邪気な少年に応えるアレイド。

……そう、ヒーローによって悪は倒された。倒されたのだから、あの少年のように私も手放しで喜べばいい。

フィル「調子に乗りおって……まあ、多少の実力は認めざるを得ないが。ですよね、姫様?」

なのに、なんだろう。

胸に手を当て、今度はちゃんと鼓動を感じ取ってみる。
……一定周期で伝わる微弱なリズムは、普段の自分の鼓動らしかった。