シルク「…………、フィル」

どうにか声を出して名前を呼ぶ。
フィルは黙って私の方を向く。強張った表情のまま。

シルク「っ────」

私は怯んで、フィルから目を反らしてしまった。そして先を続けられずに黙り込んでしまった。

フィル「…………」

シルク「…………」

いい加減にしなきゃ、とは思ってる。……思うだけ。
こんな弱虫が姫では先が危ぶまれる。……フィルも苦労する。
私が努力しなければ、迷惑するのはみんななんだ。……私は一体、何なのだろう。

フィル「……いえ、あの、すみません、」

シルク「ぇ……」

独りで塞ぎがちになっていると、フィルはぎこちなく表情を緩めて謝った。

フィル「姫様を煩わせるつもりはなかったのですが、その……申し訳ありませんでした」

シルク「そ、そんな、」

フィル「私もこの短気ぶりは反省しなければ。姫様に迷惑が掛かるのは避けたいです」

シルク「ち……が」

違う。反省するのは私の方。迷惑を掛けてるのは私の方だよ。
思っても思っても、健気に頭を下げるフィルに私は謝られるだけしかできなかった。

フィル「とにかく行きましょう。真偽はともかくアレイドが気に掛かるでしょう?」