私は後悔をした。
何かをしてしまったという過失ではなく、何もできなかったという無力に対して。

事の始まりはアレイドの一言から。それにフィルが反論して、アレイドが反発して……フィルはアレイドを殴った。

確かにアレイドはやり過ぎたのかもしれない。フィルも殴ることはなかったと思う。
……でも、元を正せば原因は私にある。
アレイドは、私を気遣ってくれたせいでフィルの反感を買ってしまった。
フィルは、私の事を心配してくれたから怒るしかなかった。

二人とも悪くない。悪いのは私。なのに、私は何もしなかった。

フィル「────」

今だってそう。
ばつの悪そうに押し黙り、何かから目を背けようとするフィルに対して、私が一押ししなくちゃいけない。

アレイドは何かが────いや、もう間違いなく魔物が来たと言って走り去ってしまった。
魔物が来たのなら一大事。フィルだってそれは分かってるはず。分かってるからこそあの態度でいる。

行かなければ。しかしここで後を追えばアレイドに示しがつかない。
……そう思ってフィルは意地を張っているのだ。