「蓮……君……」


悲鳴のような声でボソッと言う二葉。


だんだん、蓮と結んでいる手が外れそうになってくる。限界の様子だ。


これでは、二葉の手に体重をかけて手すりをつかみに行けば、確実に二人とも落ちるだろう。


だからと言って、二葉に片手で男を引き上げる力もない。


「二葉……」


それを見た蓮は、覚悟を決めた。


「二葉……時間がない、約束してくれるか?」


「……約束?」


「もし……生きて二人ともここを出られたら……現実の世界でも、また会ったりできないか?」


「……え?」


「どうなんだよ?」


「……もちろん」


蓮は無言で笑顔になると、二葉の手を勢いよく振り払った。


「!」


驚く二葉。


「蓮君!」


「ボスなんか、ぶっ飛ばしちまえ!」


「蓮君!」


何度も叫ぶ二葉。どんどん落下していく蓮。


だんだん、二葉の声が遠くなっていく。


「……」


無言で落ちていく蓮。


だが、死ぬ気はしなかった。


「生き延びてやる。絶対死ぬかよ!」


鋭く下を見る蓮。水にでも落ちれたら、まだ助かるかも……


「……何だ?」


下が見えてきた。


何やら、キラキラ光っている。


「……は?」


全身の毛が逆立った。


無数の針山だ。


到底避けることなんてできない。