「バカヤロー、こっちに来んじゃねぇよ!」


苛立ち、蓮が叫ぶ。そのときだった。


「おい蓮、前!」


健二の叫びに、蓮は前を見た。


「え……」


立ち止まる蓮と健二。目の前には、巨大な地割れがあった。


地割れの底は真っ暗で見えず、落ちたらまず助からないだろう。


地割れは大きく、幅30メートルはある。跳んだくらいではとても向こう岸には渡れない。行き止まり……


そのとき、左から声がした。


「こっち!」


その声の方向を見る蓮と健二。そこには、一人の女性が手招きしていた。


とにかく、その女性の元へ走る蓮と健二。


「あれ!」


女性が指差す先には、遠くの方に何やらレンガのようなモノが無数に浮いていた。


レンガは地割れの上空に等間隔に浮いていて、向こう岸まで続いている。


どうやって浮いてんだ、あれ……


「何だ、あれ?」


眉をしかめる蓮。とにかく、そのレンガへ走り寄る蓮、健二、女性。


近くで見ると、やはりレンガだった。


レンガは正方形の幅1メートル程度の大きさで、蓮の腰の高さくらいで浮いている。


これを渡っていけば、なんとか向こう岸に逃げられそうだ。


「サンキュー、助かった!俺は健二ってんだ。こいつは、蓮。お前は?」


女性に聞く健二。