姉弟は十分ほどあらそったがなかなか勝負がつかない。乙女が龍馬の足をはねた瞬間、「乙女、ご開帳じゃ」と権平が声を出す。
「えっ?!」
その乙女の隙をついて龍馬は乙女の足をすくいあげ、乙女をあおむけざまに転がした。股の大事な部分までみえた。
「どうだ!」
「卑怯です!」
「なにしちゅう!」権平が声を荒げた。「もうすぐ夜明けじゃ、龍馬支度せい」
「まじないですから、龍馬、この小石を踏みなされ」
乙女がいうと、龍馬は「こうですか?」とちょっとふんだ。
「これで厄除けと開運になるきに」
「姉さん。お達者で。土佐にこんど戻ってくるときには乙女姉さんは、他家のひとになっちゅうますろう」
乙女は押し黙った。しかし、龍馬は知っていた。乙女には去年の冬ごろから縁談があった。はなしは進み、この夏には結婚するという。相手は岡上新輔という長崎がえりの蘭学
医で、高知から半日ばかりの香美群山北という村に住んでいるという。
ただ背丈が乙女より三寸ほど低いのが乙女には気にいらない。
それでも乙女は、
「こんどかえったら山北へあそびにいらっしゃい」とうれしそうにいった。
「なにしちゅう!」権平が声を荒げた。「もうすぐ夜明けじゃ、龍馬支度せい」
土佐は南国のために、唄が好きなひとがおおく、しかも明るいテンポの唄しかうけない。どんな悲惨な話しでも明るい唄ってしまう。別れでも唄を唄えといわれ、
「えっ?!」
その乙女の隙をついて龍馬は乙女の足をすくいあげ、乙女をあおむけざまに転がした。股の大事な部分までみえた。
「どうだ!」
「卑怯です!」
「なにしちゅう!」権平が声を荒げた。「もうすぐ夜明けじゃ、龍馬支度せい」
「まじないですから、龍馬、この小石を踏みなされ」
乙女がいうと、龍馬は「こうですか?」とちょっとふんだ。
「これで厄除けと開運になるきに」
「姉さん。お達者で。土佐にこんど戻ってくるときには乙女姉さんは、他家のひとになっちゅうますろう」
乙女は押し黙った。しかし、龍馬は知っていた。乙女には去年の冬ごろから縁談があった。はなしは進み、この夏には結婚するという。相手は岡上新輔という長崎がえりの蘭学
医で、高知から半日ばかりの香美群山北という村に住んでいるという。
ただ背丈が乙女より三寸ほど低いのが乙女には気にいらない。
それでも乙女は、
「こんどかえったら山北へあそびにいらっしゃい」とうれしそうにいった。
「なにしちゅう!」権平が声を荒げた。「もうすぐ夜明けじゃ、龍馬支度せい」
土佐は南国のために、唄が好きなひとがおおく、しかも明るいテンポの唄しかうけない。どんな悲惨な話しでも明るい唄ってしまう。別れでも唄を唄えといわれ、


