3 脱藩と寺田屋事件
龍馬は一八六一年に「土佐勤王党」に参加したが、なんだか馬鹿らしくなっていた。「土佐だけで日本が動く訳じゃなかが。馬鹿らしいきに」
龍馬は土佐の田舎で、くすぶっていた。
……わしは大きなことを成したいぜよ!
龍馬は次第に「脱藩」を考えるようになっていた。
……藩の家来のままじゃ回天(革命)は成らぬがぜよ。
兄・権平の娘(つまり姪)春猪はいつも「叔父さま! 叔父さま!」と甘えてくる。利発な可愛い顔立ちの娘である。
春猪には計略があった。龍馬叔父さんと知り合いの娘とを交際させる…という計である。その計は九分まで成功している。
げんに春猪は、ともかくも龍馬叔父さんを五台山山麓の桃ノ木茶屋までおびきよせたではないか。龍馬が遠くから歩いてくる姿を確認してから、
「ほら!」
と、春猪は「きたわよ」とお美以にいった。
お美以は下を向いて恥かしがった。
「お美以さん、だまっていてはだめよ。ちゃんと叔父さんに好きだっていわなきゃ」
春猪はにこりといった。
「ええ」
お美以は囁くようにいった。恥ずかしくて消えてしまいそうだ。
九つのとき、お美以は龍馬に連れられて梅見にいっている。あのころ、龍馬は江戸から一度目にかえってきたときである。龍馬は、お美以の手をひいたり、抱き抱えたりした。しかし、なにしろ十一歳も年上である。九つのお美以としては龍馬は大人である。
龍馬は一八六一年に「土佐勤王党」に参加したが、なんだか馬鹿らしくなっていた。「土佐だけで日本が動く訳じゃなかが。馬鹿らしいきに」
龍馬は土佐の田舎で、くすぶっていた。
……わしは大きなことを成したいぜよ!
龍馬は次第に「脱藩」を考えるようになっていた。
……藩の家来のままじゃ回天(革命)は成らぬがぜよ。
兄・権平の娘(つまり姪)春猪はいつも「叔父さま! 叔父さま!」と甘えてくる。利発な可愛い顔立ちの娘である。
春猪には計略があった。龍馬叔父さんと知り合いの娘とを交際させる…という計である。その計は九分まで成功している。
げんに春猪は、ともかくも龍馬叔父さんを五台山山麓の桃ノ木茶屋までおびきよせたではないか。龍馬が遠くから歩いてくる姿を確認してから、
「ほら!」
と、春猪は「きたわよ」とお美以にいった。
お美以は下を向いて恥かしがった。
「お美以さん、だまっていてはだめよ。ちゃんと叔父さんに好きだっていわなきゃ」
春猪はにこりといった。
「ええ」
お美以は囁くようにいった。恥ずかしくて消えてしまいそうだ。
九つのとき、お美以は龍馬に連れられて梅見にいっている。あのころ、龍馬は江戸から一度目にかえってきたときである。龍馬は、お美以の手をひいたり、抱き抱えたりした。しかし、なにしろ十一歳も年上である。九つのお美以としては龍馬は大人である。


