かまのうちひとりが龍馬の部屋の襖をあけた。すると驚いた。ふんどし姿の裸で、のっそりと立っている。「なんじゃ?! 坂本その格好は?!」
「わしは馬鹿じゃで、こうなっちゅう」
「このお!」
大勢がやってきた。「かかれ!」
龍馬に大勢でとびかかった。行灯がかたむき、障子が壊れ、龍馬は皋丸をけったりしたため気絶する者まででる。四半刻ばかりどたばたとさわいでいるうちにヘトヘトになり、龍馬はふとん蒸しで、みんなが乗りかかった。息ができず、死ぬような苦しみになる。
「もうよかが! あかりをつけいや」
武市半平太がやってきていった。不機嫌な声でいった。龍馬は解放されると部屋を出ていった。
「なぜ先生は龍馬の無礼を咎めなかったのです?」
と、事件のあときくものがあった。
武市半平太は「徳川家康も豊臣秀吉も、だまっていてもどこか愛嬌があった。その点、明智光秀にはふたりより謀略性があったが、愛嬌がなかったために天下をとれなかった。英雄とはそういうものだ。龍馬のような英雄の資質のあるものと闘っても無駄だし、損でもある」
「龍馬は英雄じゃきにですか?」
「においはある。英雄になるかも知れぬ。世の中わからぬものぞ」
そのころ「英雄」は、千葉道場で汗を流していた。
竹刀をふって、汗だくで修行していた。相手は道場主千葉貞吉の息子重太郎で、龍馬より一つ年上の眼の細い青年である。
そんな剣豪を龍馬は負かしてしまう。
「一本! それまで!」貞吉が手をあげる。
重太郎は「いやあ、龍さんにはかなわないな」などという。もう、親しい仲になっている。龍馬は友達をつくるのがうまい。
「わしは馬鹿じゃで、こうなっちゅう」
「このお!」
大勢がやってきた。「かかれ!」
龍馬に大勢でとびかかった。行灯がかたむき、障子が壊れ、龍馬は皋丸をけったりしたため気絶する者まででる。四半刻ばかりどたばたとさわいでいるうちにヘトヘトになり、龍馬はふとん蒸しで、みんなが乗りかかった。息ができず、死ぬような苦しみになる。
「もうよかが! あかりをつけいや」
武市半平太がやってきていった。不機嫌な声でいった。龍馬は解放されると部屋を出ていった。
「なぜ先生は龍馬の無礼を咎めなかったのです?」
と、事件のあときくものがあった。
武市半平太は「徳川家康も豊臣秀吉も、だまっていてもどこか愛嬌があった。その点、明智光秀にはふたりより謀略性があったが、愛嬌がなかったために天下をとれなかった。英雄とはそういうものだ。龍馬のような英雄の資質のあるものと闘っても無駄だし、損でもある」
「龍馬は英雄じゃきにですか?」
「においはある。英雄になるかも知れぬ。世の中わからぬものぞ」
そのころ「英雄」は、千葉道場で汗を流していた。
竹刀をふって、汗だくで修行していた。相手は道場主千葉貞吉の息子重太郎で、龍馬より一つ年上の眼の細い青年である。
そんな剣豪を龍馬は負かしてしまう。
「一本! それまで!」貞吉が手をあげる。
重太郎は「いやあ、龍さんにはかなわないな」などという。もう、親しい仲になっている。龍馬は友達をつくるのがうまい。


